科学との協業で料理はさらに別次元へと進化する可能性がある(かもしれない)

 

「視点・論点 「おいしさと科学」」という記事。

 

8020478266_490fff39aa_m photo by akolosov

 

記事は……

 

宮城大学准教授 石川伸一氏による「おいしさと科学」をテーマにしたもの。

 

 “分子”という言葉には、物理学、化学、生物学、工学などといった“科学的な視点”が込められており、科学的な手法によって、従来にはなかった新しい料理を創造しようとする取り組みです。また、二十世紀の終わり頃から、一部の物理化学者たちが、料理のおいしさを分子レベルで研究する動きが活発化しはじめました。

おいしい料理の解明や新しい料理の開発には、科学のメスが入っています。

 

記事では、エル・ブリのシェフ、フェラン・アドリア氏の例を引用して、この10年ほどで進化した料理界の実状に言及しています。

 

 フランスの物理化学者エルヴェ・ティス氏は、「分子ガストロノミー」、「分子美食学」を提唱したことで知られています。

ティス氏はとシェフと協力し、調理における興味深い事実を発見し、また新たな調理法も開発しました。しかし、ティス氏自身は、「分子ガストロノミー」は、「技術ではなく科学である」であると位置づけ、新しい食材、道具、手法を用いて斬新な料理を創る技術とは異なるという主張を続けてきました。「分子ガストロノミーの主な目的は、現象のメカニズムを見出すことであり、シェフは分子クッキングを行っているかもしれないが、分子ガストロノミーは行っていない」とティス氏は明快に語っています。

 

ティス氏は残念ながら職人であるシェフを理解しきれず、両者には溝が生じてしまいました。

 

 京都の料亭料理人らが創設した「日本料理アカデミー」の理事長である『菊乃井』の村田吉弘さんは、各国で伸び盛りのシェフに日本料理を説明する際、型どおり「歴史や季節感を生かすことだ」などと言ってもあいまいすぎて相手に伝わらず、「なぜそうするのか」を科学的かつ論理的に納得させる必要を感じていらっしゃいました。

 

職人の世界では経験値が優先され、論理的な分析はあまり意味をもたないとされてきましたが、教育や後進の指導などの重要性を認識した現場では、理論化や数値化の重要性を強く認識しているものと思われる例です。

 

六十℃、一時間加熱を続けて鍋の中の温度を八十五℃まで上げたら、火を消してカツオ節を入れ、沈んだらすぐに濾す、という手順のほうが実際にはよりおいしくなるという結果が出ました。

 

この出汁の引き方は、従来は「身体で覚えろ!」と指導されてきたものです。または「見て盗め」かな。

これを無駄なく正確に後世へ伝えるために、厳密な実証を繰り返して数値化することが、料理の世界でも求められているわけです。

 

お互いの専門性を尊重しつつも、「餅は餅屋」の発想を超えて、相手の専門を深く理解しようとする気持ちが、料理を次のステージに引き上げるのではないかと思います。

 

石川氏の意見に同意です。

 

視点・論点 「おいしさと科学」 | 視点・論点 | 解説委員室:NHK



 

 

投稿者: tori_ichi